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アットホーム表参道クリニック
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整形外科看護7月号掲載

第7回:異常行動への対処
在宅で療養している高齢者において、認知症が原因で起こる異常行動は非常に大きな問題であり、そのために本人および介護者のQOLが低下し、在宅生活を断念せざるをえないケースにはしばしば遭遇します。異常行動は、転倒の大きな原因の一つであることから、それらに適切に対処することは在宅医療の現場でもきわめて重要です。今回は、苦労は大きかったと思われるのですが、上手に対応できた例について紹介します。
まず、異常行動について勉強しましょう
詳細は『高齢者の退院支援と在宅医療』を参照してください。
徘徊や不穏は、転倒の大きな原因の一つで整形外科医にとってやっかいな存在ですが、これらの認知症の症候はしばしば中核症状と周辺症状に分類されます。中核症状とは、認知症に伴う脳の器質的病変によって直接もたらされる症状で、記憶障害、見当識障害、実行機能障害などです。一方、周辺症状には幻覚、妄想、徘徊、不穏、攻撃性などの非特異的な症候があります。
徘徊や不穏は、転倒の大きな原因の一つで整形外科医にとってやっかいな存在ですが、これらの認知症の症候はしばしば中核症状と周辺症状に分類されます。中核症状とは、認知症に伴う脳の器質的病変によって直接もたらされる症状で、記憶障害、見当識障害、実行機能障害などです。一方、周辺症状には幻覚、妄想、徘徊、不穏、攻撃性などの非特異的な症候があります。

これらの異常行動は、認知症患者に一律に認められるわけではなく、重症度や病期との関連もありませんが、徘徊は中期にもっとも著しく末期には治まる傾向があります(図1)1)。徘徊にはさまざまな原因があり(表1)2)、その原因により対処法がちがいます。基本的には複数の要因が原因になっていることがほとんどで完全な対処法はありませんが、徘徊する者の立場に立って原因を探ることで対処法がわかってくることが多いようです。
表1:徘徊の原因と対処法 | |
迷子になったように感じる、 親しい人やものを探し求める、 帰宅願望 |
○慣れ親しんだ品物を配置する ○居場所を思い出させるように目印を示す ○家族の訪問の思い出の品物を用意する ○不安な気分は容認し安心させる ○気を紛らわせる |
尿意、疼痛、苦痛 | ○兆候を見つけ、介助または治療する |
運動不足 | ○回廊や中庭など安全に歩き回れる場所を用意する |
興奮 | ○安心させる、ストレスの少ない状況に移す ○原因を見つけ、可能なら取り除く ○患者が不穏になったときに備えて危険な物品を取り除いておく |
退屈 | ○活動的な仕事を用意する ○仲間を作る ○グループ活動をさせる |
すべてに共通 | ○安全を確保するために監視者をおく ○行方不明にならないよう監視装置を設置する ○衣服に名札を縫い付ける ○転倒の原因になるような障害物を取り除く |
夜間徘徊が大腿骨頸部骨折後のリハビリになった症例
患者さんは、93歳の女性で、強い腰痛のために歩行が困難となり往診を依頼されました。
内服薬や注射により腰痛は軽快し室内歩行は自立しましたが、2007年7月14日に自宅で転倒して右大腿骨頚部骨折を受傷しました。入院して手術を行い、入院から約1ヵ月後に退院しました。もともと軽い認知症があり、ときどき幻覚が見えていましたが、介護に抵抗することはなく、不穏や徘徊はありませんでした。入院中にリハビリテーション(以下、リハビリ)をしっかり行いましたが、退院後のADLの低下が著しく、室内はつたい歩きがやっとのために、訪問リハビリを開始しました。
退院後2ヵ月ほどで軽介助下に階段昇降ができるようになり、3ヵ月ごろから歩行器を使って屋外歩行ができるようになりました。退院後5ヵ月ごろには、屋外を安定して杖歩行ができるようになりました。
2008年2月ごろから幻覚に加えて夜間の不穏が出現し、4月ごろから夜間の徘徊が出現しました。夜の9時ごろになると「家に帰る」と騒ぎだし、安心させるような話や気を紛らわせるような話をしても治まらないため、仕方なく息子さんが一緒について30分ほど自分の家探しをするようになりました。多いときには連日家探しをしていたようですが、息子さんもリハビリだと思って付き合っていたようです。そのためか、しばらくすると下肢筋力が増強し室内歩行が安定してきましたが、息子さんは「ふだんと不穏時の歩行のレベルがまったく違うのでびっくりした」と話してくれました。ふだんは室内でもゆっくりと何かにつかまりながら歩くのですが、徘徊のときの歩行スピードは非常に速く、何かに取り憑かれたかのように坂もものともせずに歩くのだそうです。
結局、患者さんは今年になって胃ガンで亡くなりましたが、胃の状態が悪くなって入院するまで夜間の徘徊は続き、それが皮肉にも歩行訓練になっていたようです。この場合、家探しを否定せずに患者さんがしたいままにさせたことがよかったのだと思いますが、それにしても雨の日も夜間の徘徊に付き合って歩いた息子さんは非常に立派だったと感心しています。
■引用・参考文献
1.1)Holtzer,R. et al. Psychopathological features in Alzheimer’s Disease: Course and relationship with cognitive status. J Am Geriatr Soc. 51,2003, 953-60.
2.2)飯島節.“徘徊とその対応は?”.高齢者を知る事典:気づいてわかるケアの根拠.介護・医療予防研究会編.東京,厚生科学研究所,2000,256-7.
3.3)大内尉義監修.高齢者の退院支援と在宅医療.東京,メジカルビュー社,2006,232p,(日常診療に活かす老年病ガイドブック,8).
内服薬や注射により腰痛は軽快し室内歩行は自立しましたが、2007年7月14日に自宅で転倒して右大腿骨頚部骨折を受傷しました。入院して手術を行い、入院から約1ヵ月後に退院しました。もともと軽い認知症があり、ときどき幻覚が見えていましたが、介護に抵抗することはなく、不穏や徘徊はありませんでした。入院中にリハビリテーション(以下、リハビリ)をしっかり行いましたが、退院後のADLの低下が著しく、室内はつたい歩きがやっとのために、訪問リハビリを開始しました。
退院後2ヵ月ほどで軽介助下に階段昇降ができるようになり、3ヵ月ごろから歩行器を使って屋外歩行ができるようになりました。退院後5ヵ月ごろには、屋外を安定して杖歩行ができるようになりました。
2008年2月ごろから幻覚に加えて夜間の不穏が出現し、4月ごろから夜間の徘徊が出現しました。夜の9時ごろになると「家に帰る」と騒ぎだし、安心させるような話や気を紛らわせるような話をしても治まらないため、仕方なく息子さんが一緒について30分ほど自分の家探しをするようになりました。多いときには連日家探しをしていたようですが、息子さんもリハビリだと思って付き合っていたようです。そのためか、しばらくすると下肢筋力が増強し室内歩行が安定してきましたが、息子さんは「ふだんと不穏時の歩行のレベルがまったく違うのでびっくりした」と話してくれました。ふだんは室内でもゆっくりと何かにつかまりながら歩くのですが、徘徊のときの歩行スピードは非常に速く、何かに取り憑かれたかのように坂もものともせずに歩くのだそうです。
結局、患者さんは今年になって胃ガンで亡くなりましたが、胃の状態が悪くなって入院するまで夜間の徘徊は続き、それが皮肉にも歩行訓練になっていたようです。この場合、家探しを否定せずに患者さんがしたいままにさせたことがよかったのだと思いますが、それにしても雨の日も夜間の徘徊に付き合って歩いた息子さんは非常に立派だったと感心しています。
■引用・参考文献
1.1)Holtzer,R. et al. Psychopathological features in Alzheimer’s Disease: Course and relationship with cognitive status. J Am Geriatr Soc. 51,2003, 953-60.
2.2)飯島節.“徘徊とその対応は?”.高齢者を知る事典:気づいてわかるケアの根拠.介護・医療予防研究会編.東京,厚生科学研究所,2000,256-7.
3.3)大内尉義監修.高齢者の退院支援と在宅医療.東京,メジカルビュー社,2006,232p,(日常診療に活かす老年病ガイドブック,8).